日本放射線影響学会 / THE JAPANESE RADIATION RESEARCH SOCIETY

理事長挨拶

一般社団法人 日本放射線影響学会理事長
松本 義久

ご挨拶

この度、日本放射線影響学会の理事長を拝命致しました東京科学大学の松本義久でございます。本学会は、1954年のビキニ環礁での水爆実験による第五福竜丸乗組員の被ばく事故を受けて、放射線の体への影響を明らかにするために物理学、化学、生物学などさまざまな分野の知を結集する必要から、1959年に設立され、今年で67年となります。この歴史ある、そして多くの価値ある学術的成果を生み出してきた本学会の代表を務めることに大変身の引き締まる思いでおります。

私の放射線生物学との出会いは平成元年、東京大学学部一年生の時でした。医学部放射線基礎医学教室の鈴木紀夫先生、酒井一夫先生が開講されていた全学自由研究ゼミナールに参加し、そこで「アポトーシス」という現象を知りました。その生物学的な意味深さに惹かれ、いつかそのメカニズムを解明したいと思いました。その後、理学部生物化学科に進学し、大学院生として放射線基礎医学教室に戻って参りました。以来約30年、放射線の生物作用理解の鍵と考えるDNA損傷の認識・修復の分子機構研究を行って参りました。

放射線生物学はDNA修復、細胞周期、細胞死、幹細胞生物学など多くの学問分野の揺籃となってきました。また、発生学、免疫学、神経科学など生物学のさまざまな分野と接点を持っています。これは放射線が生体にとって極めて重要な分子であるDNAに作用し、遺伝情報の維持、発現、継承に大きな影響を与えることによる必然であり、ゆえに放射線生物学は生命の本質に迫る分野であると考えております。また、その成果は放射線防護、がんをはじめとする諸疾患の診断・治療など応用面でも極めて重要で、有用なものであると考えております。私が所属する東京科学大学は、このほど「科学の力で善き未来を共創する」というビジョンを掲げ、国際卓越研究大学に認定されました。この「善き未来」の実現に、広い意味での放射線を上手に活かすことは不可欠と考えております。

これから2年間、本学会の理事長を務めさせて頂くにあたり、まず、本学会がDNA損傷応答・修復など放射線影響に関わる様々な生物学分野や、医療・産業・エネルギーなど様々な応用分野の先端研究者の集う場となるよう微力を尽くす所存です。そして、学問的に新たな地平を切り開くとともに、社会からの期待に応え、信頼される学会を目指して活動させて頂きたいと思います。何卒宜しくお願い申し上げます。

令和8年6月30日
一般社団法人 日本放射線影響学会 理事長
松本 義久